第二夜

2001年3月3日深夜、某チャットルームにて―――

武内> それじゃ始めます?
きのこ> イエッサー!
――― それでは、これより月姫座談会・第二夜を始めたいと思います。今回のテーマは?
武内> 風雲!シエルの章!
――― ……という事で(笑)
きのこ> プリーズクエストミー!【注1】
武内> ………………ボクを探して?

――― じゃあ、まずはやっぱりこれ。「シエルというキャラクターの生まれたいきさつは?」
武内> シエルは完全に記号から入ったキャラですね
きのこ> キャラ出しの時、お姉さんキャラが必要だ、というのがもっとも原始的な初期衝動。だよね?
武内> 先輩、メガネ、吸血鬼と戦う人!てなモンだったよね。
きのこ> そうだねー。アルクと対を成す教会側のキャラとして作られていきました。
武内> お姉さんキャラって、自分的にはあまりピンと来なくて。それでああいう形になっていったのかな
きのこ> 初めはあそこまで派手(地味なのに派手とはこれいかに)なキャラじゃなかった気がします。
武内> 派手地味(笑)
きのこ> でね、きのこ的にはチャイムを書きたかったわけです。チャイム。氷の花【注2】の補佐官。
武内> チャイム…そうだったのか
きのこ> ハキハキしてて、丁寧口調で、秘書として有能だけど、なんか可愛い、といった。
――― あー、何か目に浮かびますね(笑)

武内> シエルと言えば、名前が決まらなかったよね。どんな候補があったっけ?
きのこ> アルト(笑)。武ちゃんに、アルクェイドと区別つかないからやめれ、と言われました。【注3】あとはありません。志貴だけは色々とあるけど、他のはみんな二発決めだよ。
武内> 志貴はタチエだったね
きのこ> タチエ。好きだったけどなー、この響き。一応、ロアとの関連も考えて日本名にも英語名にも聞こえる響きを第一条件にしてたんです。
――― ロアの名前が先に決まっていたんですか?
きのこ> ロアは、まあ……エンジェルノーツ【注4】の原案から。ネロは直感決め。翡翠・琥珀にいたっては藤乃(仮名)だったしなー。
武内> 他にも円、巴が良いといってたね。でも、ストーリーが決まったら翡翠琥珀が一番しっくり来ていた
――― 翡翠と琥珀で色的なイメージも出来ましたからね。
武内> 自分的には、翡翠琥珀はかなり良い名前だと思ってます
きのこ> ちなみに、秋葉は美沙弥とか、そういった名前だったナリ。
――― ところで先ほど、藤乃という名前が出ましたが、最初は「空の境界」【注5】とのクロスオーバーというのは全然考えてなかったんでしょうか?
きのこ> いえ、一応世界設定(超能力・魔術のルール)は同じとして。あくまで1つの世界での、ちよっとした出来事というスタンスでしたから。ほら、だから一番初めの主役である青子さんがいるわけです。【注6】

きのこ> そういえば、名前の意味でいえばシエルが一番意味があるというか、やっちまった、というか……
――― ああ、例のラルク・アン・シエル事件、ですね(笑)【注7】

きのこ> あー、思い出した。シエルの初期コンセプト。年上なのに年下っぽい、というイメージでした。
武内> シエルは「可愛らしい」というのを目指したはずだったんです。初めは
きのこ> えー、シエル可愛いよー。【注8】
武内> そうかな?むしろカッコイイキャラになっていると思うけど
きのこ> きのこ的には、シエルのとぼけ顔が、全キャラ中一二を争うほどラブリーです。
武内> 絶対立ち絵に入れてくれって言ってたよね(笑)
きのこ> うん。ラフであの顔見た時、もう意地でも使うから残してくれって言いました。
武内> シエルは一番初めのラフ【注9】のときが一番可愛らしかったと思います。
――― あの素朴さが良いカンジだったんですけどね。
武内> そのあと、色々と変化して行くわけですが…2番目のシエル【注10】は、特に評判が悪くて(笑)会社の先輩にも「あれはマズイでしょ」と言われました。で、現在のシエルに変わった訳です。
――― 最大の変化はモミアゲがついた事でしょうか。
きのこ> もみあげ! ハズすとぱわーあっぷ!
――― 力をセーブする為のウエイトだとか、プロペラントタンクだとか言ってましたよね(笑)
武内> 音楽のKATEには、もみあげが車田正美【注11】みたいでカッコイイと言われました(笑)

きのこ> シエルは学生の時は面倒見のいい先輩、法衣の時は上品な暗殺者、んで完全武装時のノースリーブ姿は格闘家(ゴウキみたいな)、というシルエットイメージをもってました。
武内> そうだね〜なんとか、法衣姿のHシーンとか入れようと画策したりしたよね。結局没になってしまったけど
――― 法衣姿で!妙に燃えるしちゅえーしょんですねえ
きのこ> 法衣って言えば、下からこう、てるてるぼうずみたいにがばーっ、と……
――― あ、ちょうどHな話題になったので、シエルのHシーンについていいですか(笑)
きのこ> あはは。この発言に関しては武内せんせいにお願いしましょう!
武内> シエルといえば、一番はじめからお尻Hが考えられていたね〜
きのこ> ですね。全ての穴を使う、というのがコンセプト。なんでも許してくれるのがシエル先輩なのですね〜
武内> ていうかね。無料告知版のサンプルHシーン。今でもシエルのくだりが一番Hだと思ってるんですが(笑)
――― あれは確かにHでした(笑)
武内> あ、本編のどのHシーンよりも、という意味。厳密にはそうではないのだけど、あのインパクトは凄かったにょさ
きのこ> うう……無料告知フロッピーについては、思い出したくないです。あのコロはまだ会社に勤めていて、初めて描くエッチシーンという事で心臓バックバクさせながらやったんです。いやもう、ともかく自分流のエロシーンの模索に四苦八苦でしたね。
――― 完全版に至っては、メガネON/OFF機能まで付いてしまいましたね(笑)
武内> これは企画の一番初めからやりたいと思ってました。自分としては、Hシーンではメガネは外して欲しかったんですよね
きのこ> んで、メガネ有りを描いてぼそりと、「……俺、メガネ好きの気持がわかったかも……」だったよねー♪
武内> シエルのHシーンは、メガネがあったほうが可愛かったです(笑) マスターアップ直前に滑り込むように作ったけど、間に合って良かったなぁと思います
――― 評判も上々ですね。むしろメガネONで進める人の方が多いみたいですけど(笑)
武内> シエルのHシーンは、奈須は書いてて楽しかったって言ってなかったけ?
きのこ> 楽しかったよ。シエルのエッチはほら、他の娘とは違って先輩がリードしてくれるから。うん?してくれてたかな……?
武内> 志貴がイジワルだったり、先輩がイジワルだったり。シナリオもHシーンもシエルが一番ドラマチックだった気がするねぇ。地味派手シエル!魔界転生!【注12】
きのこ> ですねー。きっとシエル先輩っていうキャラは、とても動かしやすかったのでしょう。
武内> アルクと違う意味で万能という。便利な女よ…ふふふ…
きのこ> 月姫の汚れ役。それがシエル先輩。いよっ、オトナの女!

きのこ> ところで、シエルのプロットを見直してみると、最後にぼそりと「おそろいメガネ」というメモがあるんです。……どうという事はなないのですが、先輩のセリフだったら可愛いなあ、と思ったり。
武内> そういうのいっぱい有るよね。やるべきことを紙に書いて整理しよう、という企画会議のとき「バンドデビュー。しかし5年後ギターが抜ける」という書きこみが…【注13】
きのこ> うわはははははは!
――― 何が何だか分かりませんよ(笑)

武内> 次行きますか
きのこ> で、次の話題に。ほれほれ、なにかクエスチョンしてー
――― いや、なんか今日は前回にもまして進めにくいというか…(笑)
きのこ> 早くしてーストスリー【注14】が待ってるのー。
――― 待たせておけ!
武内> BR3【注15】が待ってるのー
きのこ> 対戦相手いないくせにー。
武内> 神の如き、CPUが我が相手。
――― 進まねえ〜(泣)

――― アルクェイドにはモデルがいましたけれど、シエルはどうですか?
武内> シエルのモデル、ナス的にはどうよ?
きのこ> シエルのモデル? あれクローベット【注16】……ではないか。うーん、武ちゃんの果てなく青い【注17】で出てきた秘書さんかなあ。
――― デザイン的にはちょっとくろべえ【注18】入ってますね。
きのこ> 自分が知るかぎり、厳密なモデルはいないと思うけど。
武内> カレー好きっていう設定はどの辺りから生まれたの?
きのこ> カレー好きですか。ついに来ましたね。
――― 今明かされる衝撃の事実?!
きのこ> シエルのお父さんはですね、パン職人としてナンをライバル視していたわけです。で、娘のシエルには「おまえは死んでもカレーは食べるな。いや、むしろ殺す」とまで言われまして。で、ずーっとカレーという単語から遠ざかっていたわけです。
武内> まじすか(笑)
きのこ> んで、埋葬機関の初仕事でインドの使徒を倒しにいったおり、カレーに出会ったわけです。その攻撃的かつエキセントリックな味を前に、「お父さんはこんなおいしいものを独り占めしてたのかー!」、とメロメロ(死語)になってしまった、と。
武内> インドの使徒…なんか笑える響きだ…(笑)
――― どこまで本当なんですか(笑)
きのこ> ちなみに、その時シエルにカレーを食べさせた使徒の名はカリー・ド・マルシュ。のちに二十七祖の一人として加わる、使徒きってのお笑い担当だとかなんとか……。
――― うそだ!
武内> その虚言癖をなんとかしてください。【注19】また騙されるところだった…
きのこ> カリー・ド・マルシェまではほんとだよ。
武内> ほとんどホントじゃねえか!
――― そもそもインドに行ってるってあたりから怪しいんだ!
きのこ> だから言ったじゃん。シエルのカレー好きにロマンはない、と。あるのはただ嘘みたいなホントの話。ライズアンドトゥルー!
武内> なにがなんだか、わからねえ〜!

――― ロアが消滅した後、シエルの肉体に「抑止力」の影響というのは残ってるんでしょうか?
きのこ> ロアが消滅した時点で、シエルの不死性はなくなりました。あ、けどシエルが会得している自己保存の魔術ってのがあって、そのおかげでかなり頑丈です。あいかわらずハードプレイ可能な人。
武内> シエルの魔術的ポテンシャルって、だいたいどれぐらいあるの?
きのこ> Aランクの魔術師よりさらに上。というか、シエルの優れた特質っていうのは、魔力保存の上限がとてつもなく高い、ということ。
――― 例えば、普通の魔術師と比べてどのくらい差があるんでしょう。
きのこ> 一般の魔術師の魔力貯蔵量が大ジョッキだとすると、シエルは金だらい。いや、ポリタンク。魔術戦を行えば、一般の魔術師は水鉄砲で、シエルはホースの水を直接流して争うようなものです。
武内> なんか、剣とか銃とかそういった戦士としてのイメージが強いけど、実は魔術師としてもかなりイケテルわけですな
きのこ> んー、ほんとは魔術師なんだけどねー。本人は嫌がってます。基本的にオールマイティーな人で、武器もなんでも使う。好き嫌いなしだけど、その中で唯一好きなのが銃器。
武内> 魔術は得意なの?
きのこ > 得意、というかたくさん知っている。ただ使うことはほとんどないので、宝の持ち腐れです。使った事のない魔術のほうが多いぐらい。
武内 > アルクもそうだけど、シエルも本編では語られていない部分が多いねぇ
――― 過去とか、職場とか、色々ありそうですよね

――― じゃあ今度は、作品中最強の「武器」である第七聖典について。
きのこ>あれは元々、幻想種【注20】である「一角馬」を埋葬するおりに角だけを加工して、武器にしたものなんです。はじめは聖なる象徴でもあったモノなので、最後のトドメというか、儀礼の終わりに締めとして用いられていたようです。んで、それがいつの頃からか武器として扱われ始めた、と。
――― 最初からあんな物騒な武器だったんですか。
きのこ>いや、最初は槍とか杭といった使用方法だったのですが、武器か兵器へと移り変わっていく中、より実戦的に銃剣となったわけです。……まあ、それでも完全に銃剣であったわけではなく、形式としての聖典としてまだ威厳はあったわけなのですが……重火器大好きなシエルによって無骨なパイルバンカー【注21】へと変貌させられてしまった、と。
――― 何故パイルバンカー…
武内>初め奈須からは有機的で無骨なツノ、と指定がありました。それではインパクトに乏しいと思い、どうせならパイルバンカーにしないか?と提案してああいう形になったわけです。
きのこ>第七聖典を出そうと思ったきっかけは、「第七聖典」という名前でありながら、それが書ではなく対使徒用の完全な兵器であった時のインパクト(ヴィジュアルとしての、ですね)を狙った、という所がありましたからね。
武内>とにかくイメージが全然掴めなくて困りました。一角馬の角だと知ったのも、じつはマスターアップした月姫をポプルスに入稿しに行く電車の中で読んだ白本でだったりします。
――― うわー。
武内>もっと早く教えてくれたら、もうすこし…こう…(苦笑)色々と不満と言うか、むしろ後悔が残るデザインですので、次回があるならリニューアルしたいですね。
――― 作品中では、シエルの手でさらに趣味丸出しな大改造をされた事にするとか(笑)

――― 埋葬機関としてのシエルと、優しい先輩としてのシエル。どちらが本当のシエルなんでしょう?
きのこ> 優しい方だよ。
――― あ、じゃあ学校での姿がシエル本来の姿なわけですね。
武内>どっちも本当と言う気もするけどね。月姫のキャラはみんないろんなモノを背負っちゃっているから、Hの後とかが本音が強く出ているのが多い気がします。シエルもそんな感じ?
きのこ> ですね。本人は志貴と同じく、昼下がりにぼんやりとお茶を飲んでまったりするのが大切、といった人です。
――― どういう学園生活送ってるんですか?
きのこ> ちゃんと授業は出てるよ。一番後ろの席で目立たないように先生の話を聞いて楽しんでいます。あとは頼まれ事を解決すめために廊下を走りまわってたり。先生たちを騙くらかして茶道室をゲットし、あまつさえ部費までも捻出させて和菓子食べ放題、という……ん? 実は知能犯?
武内>知能犯知得留!妖殺行!【注22】

――― 先日の人気投票では、シエルが第5位という結果に終わりましたけれど、結果を見てどうですか?
武内> 特に投票閉め切り直前の猛追撃は鬼気迫るものがあったです
きのこ> いや、きのこは予想とおり。ほんとだよ。シエルは一番よりナンバー2【注23】、という位置付けなわけだし。あんまり表立って意見を言う人じゃないでしょ?
武内> 確かに、一番を取れるキャラじゃないのが、一番の魅力かも
きのこ> そうだね。正直なところ、どのヒロインもほんっとーに均一に好きな自分としては、シエル先輩の追い上げは嬉しかった。うん、できれば同率一位が五人、というのが理想でした。
武内> 本気で、さつきに負けるのを心配してたから(笑)【注24】最古の3ヒロインの一柱なのに

きのこ> ……うん、こんなところかな。
武内> ちょっとマッタリしてしまったねぇ
――― 質問もまだ少し用意してるんですけど…。
武内> というわけで、今回の座談会はこれにて終了!
――― げげーん!
きのこ> んじゃ、次は秋葉ということで!
――― じゃあ、スタッフ座談会第3夜・秋葉編をお楽しみに…うわホントに終わっちゃったよ(笑)
武内> 宜しいのでは?とりあえず、今夜はお開きということで
きのこ> それじゃ、そーゆー事できのこは退室します。あ、おつかれー。
武内> ほいじゃお休み〜
――― おつかれさま〜

第二夜おわり
(聞き手・OKSG)



TYPE-MOONホームページへ